PHD2でガイドをちょっとまじめに

Posted by MoonChild ( id 63 )
11 10 2015

初期設定のままPHD2でガイドを行ったところ

「キャリブレーションで計算された赤経と赤緯の角度は疑わしいです」や
「ガイド星が動かない」のワーニング
が表示され、
この状態で強行しても満足なガイドができませんでした.

この時の設定は
・PHD2へガイド鏡の焦点距離の設定(f=185mm)
・ガイドカメラのチップサイズの設定(3.75um)
のみで、キャリブレーションステップ値は600msとしていましたが、キャリブレーション時は
・西へは赤道儀が順調に動くが、東への戻りが異常に遅い
・北になかなか動かず、南への戻りが動かない
で、キャリブレーションで異常に長い時間がかかり、ガイドもグラフがガタガタで、
2分間ガイドが精一杯の状態でした.

これではいけないと、ちょっとまじめに勉強してみました

◆テスト環境

赤道儀:セレストロン ADVANCED-VX
ガイド鏡:D 50mm f=185mm(BKP200/F800付属のファインダー改)
      :D60mm f=240mm
ガイドカメラ:QHY5L-Ⅱカラー
ガイドソフト:PHD2 Guiding 2.5.0 (露出は1.5秒で固定、ヒステリシス・アルゴリズムを使用)

◆テスト-1

◆◆バックラッシュ調整

バックラッシュが大きいと赤経赤緯の移動に時間がかかり、追尾精度が悪くなることは分かっていましたので赤道儀の取説を読んでみると
「アンチバックラッシュ機能はハンドコントローラーで設定することができます
・・・実際に試しながら設定することになりますが、
     20~50の値は通常眼視による観望に最適な値です
     ガイド撮影の際にはより高い値が必要になるかもしれません」
とあるため、赤経赤緯ともに 50 を設定し、実験です.

ADVANCED-VXにはPEC機能もあるのですが、これは極軸調整がきちんと行われていることが条件なので、今回は使用しないことにします.

◆◆結果

相変わらず、キャリブレーションで異常に時間がかかり、赤経赤緯も直交していません. Review Calibrationで結果をみてみると
・RA steps:14 Dec steps:19
・Orthogonality error(直交性誤差):11.8度→これが10度以上になるとワーニングが出るようです.
となっており、これで強行してもグラフも赤経赤緯ともに 最大 3″ズレています.


[Review Calibration Data]

[Display Graph/Display Star Profile]

[RMS Error/RA Osc値拡大]

 

[撮影結果]

コ・ボーグ36ED+スリムフラットナー1.1× f220mm
EOS Kiss X7i + LPR-N フィルター 露出121.5秒 はくちょう座 サドル付近

この後バックラッシュの設定を共に70に変えてみましたが、グラフがより鋭利なノコギリ状態になり精度も落ちてしまったので、ここでテストは終了です.



◆テスト-2

[ 星のつぶやき ]
http://d.hatena.ne.jp/hp2/20150819/1439989093
さんの日本語マニュアルやガイドカメラ(QHY)購入時の取説を読み込み、

また 英語になりますが、
[ PHD Basics Part #1 / PHD Basics Part 2 ] のYOU Tubeビデオも参考に
https://www.youtube.com/watch?v=PRY2jN3xTBQ

さらに諸設定を行いました.

◆◆バックラッシュ値変更
・理由はありませんが、とりあえず30に変更しました

◆◆ガイド鏡の変更
・前回は反射鏡の付属品であったファインダー(D50mm/f185mm)を利用しましたが 前から準備していたガイド鏡(D60mm/f240mm)に変更しました.このガイド鏡は結構ガッシリした作りですがかなり重いので使うのを止めていましたが、より精度が上がると思いこれに変更しました.

◆◆キャリブレーションステップ値変更
・QHYの取説ではPHDでの使用方法が簡単に記載されており、
「初期設定値 750 よりも 1500 から 2000 程のほうが効率的です.このステップ数が小さいほど緻密なキャリブレーションを行いますが、

キャリブレーション時間が長くなりますので、準備時間に貴重な撮影時間を割くことになります」とあり、また日本語マニュアルでは
ステップサイズが各方向とも8~14ステップになる場合に良好なキャリブレーション結果が得られます」とあります.
前回のテストではRA:14 Dec:19だったので、当てずっぽうで 1200にします.

後で気づいたのですが、PHD2でのキャリブレーションステップ値計算では
・ガイド鏡の焦点距離 f =240 mm を入力すると450になります
・次に、ガイドスピードに初期値の1.0ではなく、VX赤道儀側のオートガイドレートに初期設定されている  0.5 に変えてみると 900になります
・さらに、赤緯キャリブレーション度に、ガイド星のおおよその赤緯(はくちょう座  サドル)の赤緯 40度 を入力すると  1300になります.

 
あながち間違った値ではなかったようです

◆◆ダークライブラリ作成と自動ガイド星選択の活用
ガイド星は小さい画像のほうが精度が上がるようです.「Display Star Profile」でガイド星をみた場合、
ガイド星の断面が半値全幅(FWHM)の測定値(グラフ)は台形ではなく、先端がとがった山形の方が良いようです.このため
ガイド星の選択は「Auto-select Star」で行う方が確実です.

マニュアルでは「誤ってホットピクセルが選択されないよう、不良ピクセルマップやダークライブラリを活用すべきです」とあるので事前にダークライブラリを登録しておくことにしました.

◆◆結果

・キャリブレーションでは西東方向ではそんなに時間は掛からなくなりましたが
  北南方向で未だ時間がかかりような気がします
RA steps : 14 → 10 に改善?
Dec steps: 19 → 28 に改悪?

・赤経赤緯の非直交ワーニングは出なくなりました
Orthogonality error(直交性誤差):11.8度 → 6.40度に改善

・RMS Error
RA 0.28 (1.16") → 0.31(1.01") に改善
Dec 0.25(1.03") → 0.19(0.61") に改善
Tot 0.37(1.56") → 0.37(1.18") に改善

・RA Osc: 0.28 → 0.40 に改善?
この値は「現在の赤経方向の動作が直前の赤経方向の動作と反対の方向にある確率」のことらしく、
「マウントにピリオディックエラーがなければ、この値は0.5になり、ピリオディックエラーを考慮に入れれば、理想的な値は0.3に近づく」らしいです.

・グラフではDec方向は落ち着き(?)コ・ボーグ36EDでは4分露出でもきれいなガイドができるようになりました.が、10分露出ではまだダメです.
キャリブレーションステップが未だ大きいのと、RA方向のガイドがまだ落ち着いていません.

[Review Calibration Data]

[Display Graph/Display Target/Display Star Profile]

[RMS Error/RA Osc値拡大]

[撮影結果]

コ・ボーグ36ED+スリムフラットナー1.1× f220mm EOS Kiss X7i + LPR-N フィルター 露出120.8秒 はくちょう座 サドル付近

コ・ボーグ36ED+スリムフラットナー1.1× f220mm EOS Kiss X7i + LPR-N フィルター 露出240.9秒 はくちょう座 サドル付近

コ・ボーグ36ED+スリムフラットナー1.1× f220mm EOS Kiss X7i + LPR-N フィルター 露出601秒 M15球状星団付近

上の写真とは対象は違いますが、10分露出には絶えられませんでした.



◆今後のテスト

下記を中心にガイド精度UPに挑戦しようと思います

キャリブレーションステップ数の改善

・キャリブレーションステップ計算
ガイド星のおおよその赤緯を設定し、正しい計算値で実行する

・露出時間
1.5秒より大きくし、キャリブレーションの間隔を大きくしてみる

・バックラッシュ
Dec stepsが大きく、また、南への戻り方向がずれているので、赤緯方向のバックラッシュを大きくしてみる

グラフの滑らかさ改善

「ガイドアシスタント」機能の利用
最小移動距離の設定値に基づいてパラメータを変更してみる この機能でグラフ下段の「MinNo」を適正値に変更できる

・RA Oscの適正化
非常に低い場合(例えば0.1)、RA aggressivenessを大きくするか、ヒステリシスを小さくする。
逆に値がかなり高くなった場合(例えば0.8)は、RA aggressivenessやヒステリシスを上記とは逆に調整する

・修正度合いの適正化
グラフ表示画面左側の「Corrections」で赤経赤緯方向への修正度合いが分かる棒グラフを表示できる.
各方向での修正度合いが大きいようなので、aggressivenessを低くしヒステリシスパラメータを高めてみる.

<参考>
aggressivenessが100%に設定されている場合、マウントを0.5ピクセル分動かすよう、ガイドコマンドが発行される
aggressivenessが60%の場合、マウントは60%分、すなわち0.3ピクセル分しか移動しない
ヒステリシスパラメータを大きくすると、修正は滑らかになるが、本来の変位に対する反応が遅くなるリスクがある



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